「へ?」
よく意味が分からなくて聞き返す。
すると、彼は目を附せて、手の力が強まった。
「家に入らないほうがいい」
「でも……」
「胸騒ぎがするんだ」
「…………」
最後の言葉だけ、私を見つめてはっきりと言った。
その瞳は不安の色に染まっていた。
そんな顔をされると返事に困る。
でも
――…結城くんには悪いけど。
「荷物取ってこなくちゃ。一応挨拶もしなきゃだし」
「詩織!」
「すぐ戻ってくるって!大丈夫だから」
ね?と笑うと、掴まれていた手の力が抜けた。
これを機にさりげなく手を引く。
一瞬、結城くんの顔が悔しそうに歪んだ。
でもそれは、瞬きをする間に元に戻っていて、
曖昧に微笑んでいた。
「分かった。気をつけろよ」
「うん」
私は優しく笑うと、家まで小走りで向かった。
その時、後ろで結城くんと章さんの話し声が聞こえた。
家に入って、階段を上がろうとしたところで足が止まった。
「荷物……?」
よくよく考えてみれば、荷物なんてない。
服は夏希さんのを借りていたし、
自分のものなんて何一つ持ってない。
唯一自分のものといったら、退院した時に着たワンピースぐらい。
「荷物なんてないじゃない」
だったら何で叔母さんは荷物を取りにこい、だなんて言ったんだろう。
挨拶のため?
それは考えにくいな。
私は首を振ったり傾げたり、他人から見たら随分変な人だろう。
ずっと考えていてもらちが明かない。
そう判断した私は
「……とりあえず戻ろう」
そう結論を出した。
そして、階段に背を向けた。
その瞬間、誰かに口を塞がれ、羽交い締めにされた。
「んっ!んー!!」
「騒ぐな」
耳元に囁かれる知らない男の声。
目の前にはいつの間にか叔父さんが立っていた。
よく意味が分からなくて聞き返す。
すると、彼は目を附せて、手の力が強まった。
「家に入らないほうがいい」
「でも……」
「胸騒ぎがするんだ」
「…………」
最後の言葉だけ、私を見つめてはっきりと言った。
その瞳は不安の色に染まっていた。
そんな顔をされると返事に困る。
でも
――…結城くんには悪いけど。
「荷物取ってこなくちゃ。一応挨拶もしなきゃだし」
「詩織!」
「すぐ戻ってくるって!大丈夫だから」
ね?と笑うと、掴まれていた手の力が抜けた。
これを機にさりげなく手を引く。
一瞬、結城くんの顔が悔しそうに歪んだ。
でもそれは、瞬きをする間に元に戻っていて、
曖昧に微笑んでいた。
「分かった。気をつけろよ」
「うん」
私は優しく笑うと、家まで小走りで向かった。
その時、後ろで結城くんと章さんの話し声が聞こえた。
家に入って、階段を上がろうとしたところで足が止まった。
「荷物……?」
よくよく考えてみれば、荷物なんてない。
服は夏希さんのを借りていたし、
自分のものなんて何一つ持ってない。
唯一自分のものといったら、退院した時に着たワンピースぐらい。
「荷物なんてないじゃない」
だったら何で叔母さんは荷物を取りにこい、だなんて言ったんだろう。
挨拶のため?
それは考えにくいな。
私は首を振ったり傾げたり、他人から見たら随分変な人だろう。
ずっと考えていてもらちが明かない。
そう判断した私は
「……とりあえず戻ろう」
そう結論を出した。
そして、階段に背を向けた。
その瞬間、誰かに口を塞がれ、羽交い締めにされた。
「んっ!んー!!」
「騒ぐな」
耳元に囁かれる知らない男の声。
目の前にはいつの間にか叔父さんが立っていた。


