キオクノカケラ

息を大きくすって拳を軽く握る。

そしてゆっくりと頷いた。


「まずは私から話すね」


そう言って、またふたりの間に座り込む。


「今から3ヶ月くらい前かな…気がついたら病院にいたの」

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「…………」


ここ、どこ?

周りを見渡すと

白い壁と白い天井


……病院?


病院なのは分かったけど、どうして私が病院にいるのかが分からない。


頭がズキズキする。

そっと痛む頭を触ると、なんだかザラザラしたものが巻いてある。

包帯かな…

私、頭ぶつけたの?


頭をおさえて考えていると、ドアが開く音と共に看護師さんが入ってきた。


「あら、起きたのね。上体起こせる?」


私はこくりと頷くと、看護師さんの手を借りて、上体を起こした。

看護師さんは隣にある椅子に腰かけると

優しく尋ねた。


「あなた、名前は?」


「名前……?」


「そう、身元が分かるものを持っていなかったから」


「…私は………」



私は…………


あれ?

名前…出てこない。

「?どうしたの?」


急に口を閉ざした私に不審に思ったのか、

看護師さんは私の顔を覗き込む。


私はその顔を上目遣いに見ると、

ゆっくりと首をふった。


「分からないの?」


私はゆっくりと頷く。


看護師さんは眉をひそめて、

先生を呼んでくる、と言い残して、部屋を出ていった。



私は……誰?

何をしてたんだろう…

記憶を辿っていこうとすると、ズキンと頭に電撃が走った感じになる。


「っ………」


しばらく頭を抱えていると、

先生らしき人が部屋に入ってきた。