今日一日の授業が終わって、教室はガヤガヤと騒がしい。

さっさと支度をして帰る者、友人とのお喋りに華を咲かせている者。


そんな中、私は身支度もそこそこに、ぼんやりと外を眺めていた。


どうせ支度が終わったところで、私は勝手に帰ることはできない。

これから毎日、健斗が迎えに来るのを待って。

学校に行くときも送ってもらう。

これは《あの人》との契約内容の一つ。

最初は《あの人》が送り迎えをするはずだったけど。

健斗が役目を買って出てくれたおかげで、それは免れた。


ほっとした反面、自分の不甲斐なさを痛感した。


あの時、一緒に考えるとか言っておきながら。

私は結局守られてる。


私は唇を噛んだ。

――どうしたらいいんだろう。

病院であの人が持ち掛けてきた契約。

私の選択は正しかったのかな…?

ふと不安が胸をよぎる。

正しかったと思いたいけど。

これで全てうまくいくとは思えないし、思ってもいない。


嫌な予感がする―――。







「…………結城くん……」



ぽつりと愛しい人の名前を呟く。

いつだって、私が不安な時にそばにいてくれた。

手を握ってくれた。

『大丈夫。オレがついてる』そう言って微笑んでくれた。










―――――会いたい。




彼の顔が頭から離れない。


自分から突き放したくせに、なんて自分勝手なんだろうと思う。


でも会いたいという気持ちはどんどん膨らむばかりで…。


何度でも、彼の名前を呼んでしまう。




「…結城、くん……っ」