「ちっ…確信犯ってわけか」


「ふふ…それは心外ですね」


結城くんはキッと章さんを睨むが、見事に笑顔でかわされている。

結城くんより章さんのほうが一枚上手…かな?


「詩織ちゃんっ!!」


「わっ……」


私の名前を叫びながら

さっきまでドアの所に立っていた女の子のひとりが、

私に勢いよく飛びついてきた。

いきなりのことにバランスを崩した私は、

その女の子に押し倒される形になって倒れた。


「っう……」


「詩織ちゃんっ…詩織ちゃん……良かった、良かった無事で…っ」


「えっと…あの……」


泣きながら私にしがみつく彼女は、一向に離れる気配がなくて

動けない。


誰か分かんないけど、

すごく心配してくれてたみたい…


私は、かろうじて動く手で、彼女の頭をそっと撫でた。


するとますます締め付ける強さが強くなって、少し苦しい。


「恵、再会を喜ぶのは構わないんだけどさ、そろそろ離してやってくれない?」


「くすくす、詩織さんが困っていますよ」


「あっ!ごめんね?嬉しくて、つい…」


結城くんと章さんの言葉で、私はようやく離してもらえた。

結城くんが伸ばした手を貸してもらって起き上がる。



よく見ると、すごくかわいい娘。

長くてサラサラの紫色の髪に

映えるようにあるふたつの若草色の瞳

色白で、華奢な体

…可愛い

まさにその言葉が、彼女にはピッタリだった。