手術中の赤いランプが嫌に目に付く。
結城くんを病院に運んでからもう2時間が経つ。
先生も、看護師さんも、誰一人として出てこない。
結城くん……。
顔の前で組んだ両手に力を込めると、肩にポンと手が乗せられた。
その手を辿ると…―――。
「章さん…」
「大丈夫ですよ、頭領は。
あれでいて、結構タフですからね」
「はい……あの、章さんの方こそ、足は…」
「あぁ…なんともありませんよ、このくらい。
ですから……そこのあなたも気にする必要ありませんよ…?」
「…………っ」
章さん…目が。
目が笑ってませんよ。
健斗が珍しく怯えてるじゃないですか…。
「章さん…そのくらいにしておいてあげて下さい。
健斗も、反省していると思いますから」
苦笑を浮かべて健斗に視線を移す。
章さんも彼を見ると、一見爽やかな笑みを浮かべた。
「……後ほどゆっくりとお話しましょう」
「…………お手柔らかに」
章さんの笑みの奥に隠された、黒いものに気が付いたのは私だけじゃなかったらしく、
健斗も頬に冷や汗を流しながら口角だけを上げていた。
それを見て、思わず頬が緩んだとき、ふいに声をかけられた。
「兎街結城さんの付き添いの方ですか?」
「あ…はい」
驚きつつも返事を返せば、手に黒い回覧板のようなものを抱えた看護師さんは、
少し焦ったように私たち全員の顔を見ながら言う。
「実は、B型の血液なんですが…前の患者さんに大量に輸血してしまっていて足りないんです。
血液センターを待っている時間もありません。
どなたか合う方はいらっしゃいませんか?」
B型……私はA型だし…。
ちらりと章さんを見ると、珍しく眉を潜めていた。
…きっと章さんも違うんだ。
なら健斗は……―――。
「……僕B型です」
そう一歩前に踏み出したのは今まさに考えていた健斗で、私は安堵の息を吐いた。
しかしそれも束の間。
低い章さんの声に、私の体は凍りついた。