「その、大事な人は…誰に狙われているの…?」


「………それを言って、詩織が何とかしてくれるの?」


「え……」


「それを言ったところで、お前に何とかできる力があるのかよ!?」


「っ…!」


彼の言葉はあまりにも確信をついていて、

私は何も言い返すことができなかった。



私には何もない。

権力も、お金も、人脈も。

今だって、自分ではどうすることもできないから、時間稼ぎをしてるだけにすぎない。

私は、なんて無力なんだろう……。


「…っ、そんなこと…ない……」


ふいに後ろから聞こえた声に驚いて振り向くと、

荒々しく呼吸をした結城くんが、立ってこっちを見て優しく微笑んでいた。


「結城くん!!動いちゃ駄目だよ!」


「大丈夫、だって…っ。
それより、今、自分のことっ、無力だとか、思っただろ…?」


「!どうして…」


まるで心が見透かされてるみたいで、大きく目を見開くと、

彼は呆れ半分に微笑みながら私の頬に手を伸ばした。


「分かるって…。
大丈夫だよ…お前には、お前にしかできないことが、あるから……」


「私にしか、できないこと……?」


彼はそっと頷く。

そして私の頬を優しく撫でた。


「あぁ…オレにはできないことだよ」


私にできて、結城くんにできないもの?



………わからない。


首を傾げると、結城くんは微笑みながら自分の腰へと手を伸ばす。

そして……―――。




ガァンッ




結城くんが健斗を見たのと、左手を彼に向けたのは、ほぼ同時だった。

さらにそれが拳銃だったこと。

結城くんが彼を撃ったことに気が付いたのは、

カランカランと彼の銃が床に落ちた音を聞いてからだった。