「許さないも何も、勝手にあなたを庇って、勝手に撃たれたのは彼ですよ?
僕はただ引き金を引いただけです。
諸悪の根源は僕かもしれませんが、
・・・
直接の原因はあなた。
そうでしょう?」
彼は意地悪そうに微笑みながら私を惑わそうとする。
けど、こんな罠にかかるほど私も甘くないんだから!
「でもあなたは分かっていたはずです。
私を撃てば、いつか結城くんが私を庇うことが」
「…予想はできても、確信は持てませんよ」
「いえ、あなたは確信を持っていましたよね?
私これでも視力2,0なんですよ?
私見ました。あなたが引き金を引くとき、私じゃない誰か―――結城くんのことを見ていたところを」
「…………」
でも、やっぱり私が悪いのかもしれない。
さっき心臓に銃を向けられたとき、恐くて動けなかった…。
撃たれる。
死んじゃう。
そればっかりが頭を支配して、足がすくんだ。
自分から彼を庇っておいて、死にたくないだなんて。
自分勝手すぎる。
結城くんは、命がけで私を守ってくれたのに…。
結局私は、足手まといにしかならなかった……っ。
涙が零れ落ちないように、ぎゅっと唇を噛み締める。
けど、どんどん溢れてくる涙は私の視界をぼやけさせ、やがて頬を伝った。
それを荒々しく袖で拭って、もう一度彼を見据える。
「どうして…?
どうしてこんなことするんですか……?」
「…………」
「答えてください」
「…………」
「答えてよっ!健斗……っ!!」
「!!」
思わず先程フラッシュバックしたときに思い出した彼の名前を叫ぶと、
彼―――健斗は僅かながら目を見開いた。
しかし、それは瞬きをする間に元の冷たい表情に戻っていて、
静かに、少し震えた声で言った。
「詩織…そこをどくんだ」
「……嫌」
「っ…僕はそいつを殺さなきゃならないんだ!!」