新しい長ズボンを借りて、教室に戻る時
高橋がこう言った

「私も前は、友逹いたんですよ」

「今もいるだろ」

「…水川君、私ね」

「ん?」

「足を切断して、しばらく経って退院したんです
やっと学校行けるって思って
友達に会えるって思って
ワクワクして学校行ったら…」

へへ、と髪をいじりながら

「“気持ち悪い”って言われたんです」


それはあまりにも残酷で
俺は言葉を失った

「結局みんな私がモデルだから、って付き合ってくれてただけで
モデルでもない、足もない。
そんな私に興味なかったみたいです」

「…」

「それからずうっと一人です
前は皆でおしゃべりしながら休み時間過ごしたのに
今では休み時間が苦痛なくらいです」

「ごめん、俺。
何も知らなかった」

一緒の学年でありながら
誰とも話さなかった俺は、お前の名前を聞いても顔さえ出てこなかったのだ

俺が授業サボって不機嫌な空を見つめている時
コイツはどんな思いで
どんな強さを持っていたのだろう