「復縁迫ってソデにされた男が

逆ギレ、コジれた挙句に

女殺したって話はザラ・・」




鈍い音で

缶ビールが転がった音がする。



宮下ハルミが云い終わらない

ウチに神足はベランダから

姿を消したのだった。


彼は携帯を引っ掴んで

外へ飛び出していた。


( 彼女を以前、拉致ろうとした

外人の雇い主はアイツかも? )



日本人を使わない所が

流石にずる賢い。


明日食べるパンにも困って

物乞い同然に帽子を裏返し、

路頭の隅で

埋まってる者は少なくない。


仕事もなく

飢えた彼らにとって

雇い主の顔より目の前の諭吉だ。


「日本人の顔は

どれも同じに見える」って

云ってるヤツも結構いたりする。


彼女の為になら、

そう云う金を使う男である。


車には乗るなと云った。

近くの喫茶店にでもいる筈だ。



( ナギ・・・! )



携帯が通じない、


電波の通じない所って

どこだ・・!


彼女がいつも

チリ・ホットドッグを

買いに来る店、


お気に入りの

アメリカンをいれる店、


日替わりの

美味いパイを出す店など、


順番に入って彼女の姿を探した。