「ねーえ・・? 

余計な世話だと思うンだけどさ。

さっきのあの男、注意しなよ。」


「え・・・?」


ひゅっと缶ビールを投げて

よこしてくると自分も手を

休めてプシュッと音をさせた。



「アイツ、2・3日前から

ウロついてたよ。」


「・・マジ?」


「うん、

スゲー不審者だと思って。

アレ、何者なの?」




大きな溜息が出た、やはり

ヤツは復縁を諦めてはいない。

一体どうしたものか・・。


女から貰った

ビールの泡を手で払いながら。



「彼女の・・前のダンナ。」


「ナンだよー、

行かせちゃマズいじゃん。」


「逃げてもムダだって

・・思ってるみたい。」


「アー・・フツウ

堂々と来ないもんねー。」



確かにそうだ。

せいぜい

電話で呼びだすぐらいだろう。



「ねー。アタシのパパ、

弁護士なんだけど一回相談して

みたら? そーゆーの、

いつまでもウザいっしょ?」



それでこのマンションに

囲って貰ってるらしい。女曰く、

結構ヤリ手なんだとか。


初めてベランダ越しに

口を利いた女の名は

「宮下ハルミ」と云った。



「パパがあんまり頼むからさぁ

・・アタシ、もう風俗

やってないんだー・・えへへ。」



座って立膝を付きながら、

こちらを見ずに笑う。

スッピンの横顔は意外と若い。



「だからさ。

手遅れになんないウチにね?」


「・・どう云う意味?」