「ゴディさんですよね?」


「あぁ、ハイ。」


「サイン、良いですか?」



男は「ええ」と小さく返事、

慣れた様子で彼女らのシャツの

背中にサインする。


くすぐったいのか、

ただ嬉しい笑いか・・両方かな。



「ごめんね」



礼を云って喜んだ彼女らが

去って行くと、あたしに前を

邪魔した事を軽く一言詫びた。




(芸能人か、何か?)



それにしても

マネージャーさんらしき人は

何処にも見当たらないのだ。


腰を降ろし、

また彼は窓の外を眺め出す。




「おー、ナギちゃんじゃない。

店辞めたんだって?」


「ああっ!?

田口さん、こんにちわ。」




通路を通った知り合いの

関東系オヤジに舌打ちしそうだ。


片や芸能人、んで

こっちは、

"この女はホステスでーす。"

ってバラされたも同然やし。



両手一杯に

荷物を持ってたのを一旦降ろして

まで立ち止まらんでもええのに。




「うん、 知り合いにあっちの

店に誘われたから。」



「へー・・、落ち着いたら

連絡してよ。再就職祝いに

駆けつけるから。あ、これ。」