躊躇いがちではあるが

彼女の後肘を掴み止めている。




「・・・義理もないだろ。」


「うん、云いたい事云って

直ぐ帰るから。」


「車はダメだ。」

「わかった、この近くで。」



長い目のキスを交わし

"直ぐだから"と

彼を宥めてから

和祇は出て行った。



(今更・・

なんの話があるって云うんだ)



以前見た、ロータリーでの

あの

濃厚なキスシーンを思い出す。


嫉妬する位、あの時の和祇は

恍惚となっていて・・。


思い出せば苛立ちもする、

煙草を手にベランダに出た。


内側に向かい

煙草の煙を吐き出し、鉢植えの

ミニ・ガーベラを眺めてた。

咲いてた赤い花はクタリと

うな垂れ、真ん中がたんぽぽの

綿毛みたいになりかけている。



(ショボくれてんじゃねえよ)



花を一瞥して神足は思うのだ、

昔の自分ならどうしただろうと。




「さっきはゴメンねー?」



ふと

声のほうを見遣るとあの女が

イスに座って

ぺティギュアを塗っていた。




「・・・・。」


「怒った? だって彼女、

可愛いからつい揶揄いたく

なっちゃって。銀座のコよね?」


「・・・うん。」


「時々、見掛けるんだよー?

いい子だよね。ツンとしなくて

ナンか、パァっと明るいし。」



よく知ってるなと思いつつ、

彼女を褒められれば

けして悪い気はしないものだ。




「・・・・そう?」