30を過ぎたオッサンが

何をやってるんだ?

神足は

ドアの鍵を開けながらそう思う。


"好き"なんて云おうと思えば

何時でも云えるさ。

幼稚園の子供にだって

言える言葉だ。

俺に言えないハズはない。


「あ、おかえりィー。

お風呂、お先に頂いたでー? 」


彼女が肩までの髪を

タオルで拭きながら

笑顔で出迎えてくれた。


「ただいま。」


まったく、以前は色々あったが

今じゃ屈託なくよく笑う。



"眩しすぎて触れるのが怖い"


・・それはとても臆病で

稚拙な言い訳だろうか?


「少し飲みすぎた」


そんな考えを振るい飛ばし

冷蔵庫を

覗いていた彼女の後ろで呟く。

冷たい

ミネラルウォーターと取り出し、

コップを二つ並べて注ぎ込んだ。


「これ飲んどいたら?」


そう云って彼女は

自分もウコン粒を口に放り込む。

そして口を開けた神足の口にも

それを放り込んでやる。


「にがっ」

「飲み込んで」


水を一気飲みする彼を見て

また笑う。


「じゃあ、おやすみ

・・神足さん?」


座ったまま、去ろうとした

和祇の手を・・つい取っていた。