目撃者に慌てた男は

一気に彼女を引き摺り出すと

コンクリートに放り出した。


そして

エンジンの掛かっていた車を

急発進させるのだ。



「・・・ナギ!」

「ナンバー覚えたっ。」


「ヨウちゃん救急車・・!

それとケーサツ!」



走り去った車より、

動かない彼女である。


その後は警察と救急車が

ほぼ同時に来てタイヘンだった。



連れ去ろうとした男は神足にも

見覚えのない外人だった。


小田の記憶を元に探した車も

盗難車で、数時間後に

都内に乗り捨てされていた。


そして和祇は

直ぐ病院に搬送されたが、

薬品を大量に吸わされて

気絶していただけだと解った。



「帰りたい」



彼女が病室で

目覚めた最初の言葉に従い、

事情聴取も程々に

連れて帰る事が出来た。

何もかも終わった頃には

七時を回ってた。



「心配ない、

ママにも連絡しといた。」



ママとも電話で話し、暫く

休みを取らせる事になったのだ。


小田は心配で

ずっと一緒にいてくれた。

ヌルめのお風呂を

沸かしてくれたのも彼だった。



「今度は俺達が離れないから。」



神足はそう云って安心させ、

風呂上りの彼女を

寝かせ着けようとした。



「神足さん・・怪我とかは?」

「あるわけないよ」


「マスコミとか大丈夫なん?」


「バカ、

アイドルじゃあるまいし。

もういいから・・疲れたろ。」


「でも、・・ン、」



神足が

一番効果的だと思う方法で

黙らせたのは云う迄もない。

離れた和祇の目は潤み

熱を帯びている。

その瞳が・・
神足の背中を押したに違いない。


「・・・・一緒に暮らそ。」