「甘やかして・・

犠牲になんかなるな。」



もう十分じゃないか。

もうたくさんだろ?

あんな男、あの女に

付き返してやんなよ・・。



「ん・・。」

「塩味になっちゃうよ」

「ん・・。」



サンドイッチを齧る

彼女の目からぽろっと

大粒の涙が零れ落ちていた。


それでも食べ続けてる

和祇の目を身を乗り出して

テッシュペーパーで

そっと押さえ付けてやる。



「俺がいるじゃん」



そしてゆっくり

瞼へ唇を落としただけ・・。


他には何も云わなかった。

彼の優しさだけが

和祇に沁み込んだ。




「優しくせんといてって・・

云うたのに。」


「ふふ。もう諦めな。」


「なによ・・、

ほんまにヘンな人・・。」




文句も言えやしなかった。

あまりに彼と云う男が

ジンワリと

浸透して来るものだから。



彼女は自分の中の

準備が少し、

整い始めたのを感じていた。