「じゃあ、・・またな。」



耳元でそう低く囁き、

別れを惜しむ

かつての恋人の様に。



「・・・・・いつか。」



あの浮気は・・本当に

浮気やったと思うのは

あたしの

自惚れなのかもしれない。


とてつもなく

複雑な想いを抱えたまま


走り出したタクシーの中で

ぼんやりと唇を

指先でそっとなぞるのだ・・。










「・・・ヨリを戻す気?」



聞き覚えのある女の声がした。


彼がタクシー乗り場から

去ろうとすると

目の前に身重の朝子、そして

その少し後ろには見知らぬ

スリムな茶髪の男が

ただ呆然と立っていた。



「朝子・・・。」