ちょっとした仕返しに云った、
心無い一言だった。
馬鹿な事を云ったと、
早くも後悔している。
「ほんまやなー・・。」
やっとそう云うと
視線も合わさず立ち上がり
自分の食器を片付けだすのだ。
直ぐに小さなキッチンで
カチャカチャ
食器を洗い出す音がする。
「なー、
神足さんも逃げるんやったら
そろそろタクシー呼んであげるで。
・・ふふっ。」
いつもの口調にはなったが
声音が違う。
神足の後悔は
どんどんと膨らんでいった。
だが、謝ることを躊躇する。
ガキみたいな
つまらない意地と解っていて。
「車、あのまま置いといて
明日取りに来たら?」
追い討ちを掛けるかに
彼女が携帯を取りに来た。
神足は何も云わず、
煙草を消して立ち上がる。
( 俺だって、傷付いたんだ )
帰りのタクシーの中、
心の中で彼はそう呟いていた。


