Quiet man

「ギターさ・・、凄く

愛おしそうに弾くんやね。」


「・・・・そう?」

「ウン。」



勧められて借りたシャワー、

濡れた髪を拭いたタオルが

首に掛かったまま。


神足はそう云われ

表情を隠すかにタオルの端を

掴み、顔を隠す様に拭いている。


実は今夜の演奏、ソロになって

久々に

"我ながらいいデキだった”と

感じれるステージだったから

そんな風に云われると

さすがの彼も嬉しさを隠せない。



「・・聞いていい?」



今は2人掛けの小さなテーブル

で向かい合い、肴を突っつき

ながらグラスを傾けてた。



「サイズは上から・・」

「・・それ以外の事。」



彼女もその真面目顔にこれ以上

ボケられなくなってしまい、

諦めの溜息を付いている。



「・・どうぞ?」

「・・オトコ、いないの?」

「離婚したん一ヶ月前やで?
 
おるワケないやん。」



けらけらと笑う彼女が

またボトルに手を伸ばす。

らしくなく目の色を沈ませて。



「好きになったのが一年前、

結婚したのが半年前て云う

短~い結婚生活やったけど。」



嫌いで別れた訳じゃないと、

直ぐ解る。

そんな彼女の顔から目が離せず、

神足は手を伸ばして

ボトルを受け取った。



「まだ・・好き?」


「ふふ。あげた物、

返してって云う程ケチやないよ。

・・もういらんわ。」



( ・・・浮気されたか。 )