クリスマスの日、小田から誘い

を受け、家に向かうその車の中。



「シオン?」

「そう。詩音・・どう?」



ヒントは俺にチャンスを与えて

くれた、黒岩の言葉からだった。


ちょっと落ち込んでいるらしい

彼女を元気付けようと思って、

考えていた子供の名を明かした。



「なんかカワイイかも。」

「・・賛成?」

「詩音くんかァ。ウン、賛成。」



ヘソの緒が首に巻くって云うの

は結構ある事らしい。検査して

他は異常はなかったのだが・・。


それが二重だって事も気掛かり

なのだろう。俺とて勿論同じだ。

こう云う時、お腹の子に呼び掛

けて会話するのが良いのだとか。



「元気のいい証拠だって先生も

云ってたろ? 心配ないよ。」


「うん・・。」



帝王切開の可能性も考えておい

て欲しいとも云われた。

今までスンナリ来たせいか、

その反動は大きかったんだ。



「いらっしゃーい!」

「ドゾー、久しブリ。」



ルウが俺にハグした後、ナギに

もお腹に気を使いゆーっくりと

抱きついてる。




「わぁー・・いよいよだなあ。

ナギちゃん、触っていーい?」


「ヨウちゃん、お腹だけだぞ。」


「解ってるぞ! シツれーなっ。」


「ルウもイー?」

「ふふ、どうぞ。」




彼女のコートを脱がせてやると

華奢な体の膨らんだお腹に2人、

恐々と触れているのには笑った。

その様子を例えるなら

"初めて火に触れようとする原始人"である。



「・・いつだっけ?」

「四月のアタマだな。」



ルウとナギがケーキを切り分け

ているのをヨウジロウと眺めな

がら話していた。・・あの事も。




「俺ね・・出産立ち会おうかと

思って。帝王切開とかになった

ら、もうそれも無理だけどさ。」




フー、と彼が口を尖らせてまで

大きな息を吐き出している。



「スゴイな・・。俺だったら

そこまで決心できるかしら。」