「あー・・!

また中でテンゴしてる・・。」




お腹の子が動き出すと撮影中で

あろうが彼女はポコッと出た

お腹を摩り、擽ったそうに笑う。


俺が腹に耳を当てたり、話掛け

たりしている所を今だ!と

云わんばかりにシャッターを

切りまくってる女性がいた。


妊娠三ヶ月の頃からウチに顔を

出す、友人でもあるカメラマン。


デビュー前から

俺を撮り続けている人でもあり、

他のアーティストなどの写真で

も結構有名な人だった。


ベトナムから帰国後直ぐに巷に

流れてた、御懐妊のニュースを

聞き着けて連絡してきたのだ。



「奥様さえお嫌じゃなければ」



妊娠した彼女と俺を撮りたいと

云って来たんだ。リアルな話、


「売らないよね?」


そうヒトコト訊ねて笑ってた。



恥ずかしがってた彼女も"記念"

にして貰えるならと、OKする。


少し(?)ヌーディなものもあり

母はさすがに難色を示したが

出来上がったモノクロの写真に、


「こういうのも素敵だわね」


・・と、

今ではそれを楽しみにしていた。


俺は、彼女が体験し得なかった

マタニティ・ライフを満喫させ

てやりたかった。少しでも出産

への不安を軽くしてやれる様に。


安産祈願も済ませ、母が帰った

後も、マタニティ・ブルーとか、

妙な出血や、糖が降りたりとか

そんな問題はなかった。しかし、

クリスマスも近づいた頃の検査

で、赤ちゃんの首に"ヘソの緒"

が巻きついている事が判明した。