「ウワー、秋刀魚ぷりぷり。」

「ホントに食べられるぅ?」

「もう、全然ヘーキです。」



ウチの母親が暫く居ついてから

もう安定期に入る迄になった。


考えてみれば、前の状況とは

大いに違う環境である筈だった。


過去、彼女はたった独りで

医者の言葉や、ダンナの浮気に

ストレスや不安を抱えながら

臨もうとする矢先、流産した。


そんな事を思うと母の存在は

とても心強いものになった。

実は、彼女には内緒で密かに

俺が知っているナギの事を母に

話してある。



『そう云う事は

最初から云いなさいよ!』


と・・、叱られもしたが。



ナギは元々、人懐っこくて

前向きな所があるから母が武装

を解いてさえくれりゃ上手く

行くんじゃないかって思ってた。


ただ、彼女もやっぱり遠慮して

何でも自分でやろうとするんだ。

だから最初は、俺も母も、

"甘え下手"な彼女に手を焼いた。


今じゃ彼女の悪阻も殆どなく、

かわいいチュニックの下に隠れ

てるお腹もちゃんと膨らんでる。

・・イイ感じなのが嬉しい。



「オロシ完了~。はいどーぞー。」

「サンキュー。」

「あはは! 今モノマネ入った!」




(それ俺か? 似てねーッ・・・)


今、キッチンでは母とナギが

夕食の下拵えの真っ最中だ。


彼女に無理はさせられないので

買い物は母、野菜の皮むきとか

イスに座って出来るものは彼女。

そういった分担になっている。


そうそう、昨日病院にいったら

やっと80%、男の子と思って

いいと医者に云われた。


内心、胸を撫で下ろした俺。


ナギは元気に出て来てくれたら

どちらでもいいと云っている。



「ふふ、ねえ・・?

もう名前考えたの?」


「まあね。」


「あたしにも教えてくれへんの

ですよ。どう思いますー?」



3人での夕食での会話。

母はナギの事が

すっかり気に入ったらしかった。