貧血で倒れたあたしは病室の

ベッドに運ばれていた。

確かに夜勤が続いてて

バテ気味やったから。


「8週目ってとこかな」


そして院長の息子に頼み事を

したのだ。

"調べてほしい"と・・。



「そんな前からおったんやな、

そんなん・・全然知らんと・・」



前は・・6週目でいいひんよう

になったから・・少し嬉しい。



「・・彼には云うんやろ?」

「・・迷ってる。」

「何でや、云わなあかん・・!」


「・・・・。」



眉間に皺を寄せ、苦しそうな

表情で訴えかける。

彼にしてみれば、心中

複雑極まりないであろうに。




「取り合えず、呼ぶで? さっき

から心配して待ってはる・・。」

「うん・・。」


彼と入れ違うようにして

神足が病室に入って来た。

ベッド脇のイスに腰を降ろすと

あたしの汗ばんだ額を

心配そうな顔で撫で上げた。



「夏バテの貧血やて。」

「うん、聞いた」

「なー・・・、なんで・・?」



いろんな意味が含まれていた。

どうして此処へ? 何しに・・?


「黒岩さんが"オファー有難う"

って・・。」



そうか・・和祇って名前付きで

サインして貰ったんだっけ。

申し込みの担当者は院長の息子

とあたしの名前が書かれていた。

まさか黒岩自身がそこまで書類

に目を通しているとは・・。



「一緒に帰ろう、皆で。」

「は? みんなって、」

「3人・・だろ?」



神足は息を詰まらせるかに云い

目を潤ませながら・・

あたしのお腹に触れて摩った。




「・・・・・あのアホ」




人の事を"人が良すぎる"なんて

彼も云えた立場じゃないな・・。

天井から神足へと目を移して

思わず苦笑するのだった・・。




「さっきの彼が"クビ"だって、

云っといてくれって・・さ。」


「えー!! あたし、クビーっ!?」




・・・聞こえ悪いなっ!