「オツカレ」



真夏の野外ロックフェス。


異様な照付けに汗を滴らせてた

その引き際、バックステージの

スタッフ達に声を掛けて戻る。


雨が降る前か、相当むし暑い。

さっさとシャワーを浴びたい、

そう思って俺はとっとと裏へ。


そして、すっきりした後で

帰る準備をしていた時だった。



コンコンッ・・


小気味良い、ノック音がした。


"どうぞ"と返事をすると

意外な人物が二ヤッと笑って

入って来た・・、咄嗟に思う。



"想い出させないでくれ"と。



「よう、一流フロントマン」




ミスター・黒岩だった・・。

彼の事が

大好きだった女を思い出す。




「あのコ、いい子だったな」




彼は手土産だと、俺に

地ビールを1つ手渡した。

パイプイスを引き寄せ、

ドアを背に、

ゆっくり腰掛ける。




「ええ。」




俺もそう答えるしかない。




「もうどれくらい経つっけ?」

「・・・。」




彼はそう云うと、ジーンズの

後のポケットから折り畳んだ

一枚のチラシを俺に差し出した。