コンコンっと

舌を鳴らして、

とうとうあたしの手を取り

ちょっと強引めに

土管から引っ張り出した。



「で・た?」

「・・はぁ。」



雨の中向き合って、彼女は

両手を取る。


凄く細長い女の子。ゴボウ系?


雫を顎から滴らせながら

ジッとあたしを見てた。


ただし、笑いもせずに。



「・・暖かいトコに行こう?」

「え・・? あ・・ちょっと」



有無言わさずまた、



ガラガラガラガラガラガラガラ



カバンとあたしの手を

曳きながら歩き出す。


もしかしてあたし・・、

ヘンなコに捕まったんちゃうん。


まあ、相手はいくら背が高い

とは云え、女の子やし。


いざとなったら振り払ってでも

逃げれるし・・大丈夫かな。


って云うか、ちょっとこの事態、

現実離れしてて一瞬だけでも

彼の事忘れさせてくれてたから。


半ば、

"どーにでもしてくれ"みたいな。


それに今・・

あったかいトコやったら

何処にでも着いて行くかも・・。

寒くて、そんな気も半分あった。



「ココ。おいで。」



彼女がピタリと止まったのは、

新しくはなさそうな一軒家。

けど、結構デカイお家。


鍵も掛かってないドアを

勢いよく開けると



「ヨォ!」


って、

誰も居ない玄関で妙な掛け声。


ホンマに自分の家やろなー? 

帰って来た時の挨拶かあ?


パタパタと近づいて来た

スリッパの音に不安になった。