それから3日後、眼帯の取れた

あたしはお店に復帰していた。


芸能界の話題はすっかり別の

年齢差カップルや、誰それの

二股疑惑などに移り変わってる。


それでも銀座のこの界隈では

話題はまだ薄れていない様だ。


行き交う銀座の夜の住人達が

ガラス越しのあたしを眺めてる。


もう、この光景も見れないのか。



「お帰りー! ナギちゃぁん!!」

「「「「 お帰りー! 」」」」



珍しく緊張しながら

タクシーを降り、裏口から店に

入るとママが抱きついて来る。



「もー、本人が居てないっての

に、スッゴく忙しかったのよ♪」



なるほど、結構潤ったらしい。

儲かったお陰であたしのいない

間にボーナスまで出たんだとか。



「そっか、迷惑ばっかり掛けて

たけど少しはお返しできた?」


「まーね、だから大丈夫よ。

心置きなく寿退社なさいって。」


「ママ・・・。」



そう・・色んな相談をしていた

あたしにママはそれを勧めた。



「もう十分、お礼奉公して

貰ったんだから・・さ。」


「ナギちゃん」



振り向くと、他のお姉さま達が

豪勢な花束を二つも抱えてた。



「お帰り、それとおめでとう。」


「ナギちゃんも卒業かあ。

なんか寂しくなるなぁ・・。」



あたしの知る限り・・、この

"ファタ・モルガナ"に意地悪な

オネエさまは1人も居なかった。


そんな女の子達を集めた、

ママの人徳だとあたしは思う。



「ごらっ! ホステスが仕事前に

泣くなっ! 鼻水垂らして!」