「ナギちゃん、名刺、名刺。」

「あ・・ハイ。」




ママが後ろから

小声で言ってくれて

慣れた筈の行為なのに

渡す手が震えた気がする。


彼は小さな名刺を

見つめながらボソリ。



「ナギコさん・・、

これさ・・。」



ジャケットの内ポケットから

私の・・携帯が出てきた。


それを手渡し、

一回だけ目を合わすと

グラスのコーラを飲み干すのだ。



(呑めへんのに来たん・・?)




「有難うございます、

凄く助かりました。」


「・・ねえ、

大阪弁でなんか喋って?」


「え・・・!」




ちょっとだけ・・ズキ、とした。

やっぱし、

田舎者扱いしてるんやわ。


この男が

"いい人かも"だなんて一瞬でも

思ってしまった自分が

アホみたい・・。



だが、そう思ったら、

いつもの調子が出てきた。

こんな事で挫けてはいけない。

だけど心の中はゼンゼン別で。



(芸能人だか

何か知らんけど、カンジ悪っ。)



田舎から出てきたホステスを

・・・バカにしてる。