俺に気が付いた彼女は慌てて

こちらに駆け寄って来る中・・。


黒岩が歌う歌詞には

明らかにその若造に対しての

皮肉がたっぷり込められていた。



「ギターも鳴かせられねーで、

オンナ鳴かすにゃまだ早ぇー♪」



・・・しまった!

俺、出遅れたじゃん!


周りの骨太ロッカー達が

ぽつぽつ集まってきて

彼の即興ソングに音を合わせて

笑い合ってるし・・、ズルイ!

俺も今から

ベース持って来ようかしら。



「間違いなく・・

ロック・フェスの会場だな」



「ゴオ君、」


「おっ、久しぶりだなー♪

カリスマ・フロントマン。」




そして・・ジャカジャンッと、

全員息の合ったフィニッシュ。



「お久しぶりですね、黒岩さん」


「おー、

GoddyとYO-Uが来てンぜェ。」


「ィヤホーゥ・・!」



・・あっと言う間に

ロッカー以外の者しか

立ち入れない雰囲気になる。



だけどまだ、

あの若造は立ち去ろうとせず。


シブトくそこに居座って

ペットボトルの水をガブ飲みだ。


もう女うんぬんの事じゃない、

プライドの問題なのかもね。



「Goddyさーん、

次、お願いします。」


「OK、行こう、ヨウちゃん。

それと、ナギ・・?」


「ん?」


リハーサルに入る前、

小声だったけど、俺は聞いた。



「・・絶対、1人で居るな。」



・・・・・・・・・。


・・いっその事、彼女を

オンブして歌う気ない・・?