そう思ってまだ切ってなかった

携帯を取り出すと

「わ!」とつい声をあげた。

手の中でマナーモードが

いきなりブルっと来たのだ。


周りを気にしながら

俺は表玄関まで走って行く。




「・・もしもし?」


『ああ、神足さんですか。

何度も申し訳ない、実は・・。』




担当の刑事からだった。

俺は診察を終えた

ナギを連れて警察に行く。


「どうぞ」


通された部屋には

ガラス窓にしか見えない

マジックミラー。

その向こうに並ぶ数人の女達。


投石した犯人と

彼女をひん剥こうとした女達だ。



ナギを襲った帰り、

居酒屋に立ち寄った彼女らは

その事を匂わす話で

大盛り上がりしていたらしい。



休憩中だった定員が

テレビのニュースを見て

通報してくれたと言う。



「あ。」



おもむろに彼女が

その内の1人を指差した。



「あの人・・。」


「ああ、やっぱり。

リーダー格の女ですな。」


「石を両手に持ってて・・

鬼みたいに怒り狂ってた・・。」


「・・・。」



今は・・暗示から解けたかに

全員シュンとしているのに、

その女だけは他とは違った。


パイプイスから立たされて

憮然と腕組をしてやがる。



嫌な事を思い出させたな・・。

俺は彼女の肩をギュッと

抱いて軽く揺らしてやる。



・・・そして数分後、それは、

あってはならない筈だったろう。



「それじゃあ・・。」



刑事と話を済ませ、

俺とナギは帰ろうしていたんだ。



その途中のトイレの前に

婦人警官に付き添われた、

リーダー格の女。


その瞬間、空気が凍りついた。


こういった被害者と加害者を

ハチ合わせさせるなんざ

ちょっとアり得ない。



フツウそこで、


「レッツ・ファイッ!!」


・・・・だろ?


俺だって

例外じゃないと思わないのか?