__ ナギの左目瞼は

ぷっくりと腫れあがり、

青いなんてもんじゃない痣と、

目尻辺りからコメカミへと

流れるかの

細かい擦り傷が着いていた。


大きく伸びたかにも見える瞼が

目の開きを邪魔してる様だ。



「・・・見える?」



俺もようやく言葉が出せた。


今、彼女が我慢しているものを

俺が露にしてはいけない。

そう、それは怒りと悲しみ・・。



(何でお前だけがこんな目に)



ナギは赤っ鼻で、右目だけは

泣き腫らしたアトが解った。



「ん・・、ふふ。

ちょっと見え難い。

・・こっちの目な、眼球に

傷いってないか検査しとってん。

直ぐ解るって。」


「転んでなんかないだろ」


「・・うん。」



気丈にも

笑おうとする彼女が痛々しい。


俺は彼女の手と肩を誘い、

イスに座らせた。

処置室から看護師が出てきて

彼女に小さなアイスパットと

眼帯を施してくれていた。



「全部、話して」



躊躇いがちに空を見つめる

彼女の手を握ってやる。



「ウン・・。」



右手で頬をぽりぽり掻き出した。



「バス降りた途端・・・」



女の子が数人着けて来た。


手に写真を持ってたらしく

わざわざ立ちはだかり、

実物と見比べてたという。



「ブキミやし、走って逃げたら

追っ掛けて来て

服を掴まれそうになってん。」




" Goddyに近づくな、

このメスブタ!!"




「それで」

「その時は無事巻いて

店に入れたから良かってんけど」





はア、と溜息を付き

俺はちょっとだけ左目を指差す。



「裏口に出て待っとこうと思って

出た途端、石が飛んできてん。

ほら、・・これ。」




" Goddyを誑かすな淫乱女!"




彼女がポケットから出したのは

紙に包まれた石と云うより

コンクリートだ。

中に錆びた鉄が覗いてる。