「何かあった?」

『・・ううん』

「今・・どこ。」



何で嘘なんか?

何もないワケないだろう。


ナギの背後では

俺の不安を煽るかに

救急車の近い音がする。




「そこ、病院だろ。

どうかしたの・・?」



ストレッチャーのガシャ!

と云う音がこちらの胸を叩く。



「ナギ?」



彼女は電話の向こうで

何故か苦しげに黙ったままだ。



「何があった・・?」



約束をすっぽかし

オマケに泊まるだなんて

らしくもない、思い付きの

言い訳なんかして・・。




「ぁ・・・ぅ・・」

「・・・・・・待つから。」




言葉に成らず苦しんでいるのか。

鼻を頻繁にグズらしてる。




「怪我してん・・、でも・・

たいした・・事、ないから。」



涙を

飲み込んでいるのが解るのに?

もういいよ・・

大した事、あるだろうよ。

多分・・電話じゃムリだ。




「そう・・、でも会いたい。」




この後・・・電話口から遠く、

彼女の嗚咽が聞こえた。




もしかしたら___ 俺のカンは

当たっているのかもしれない、


そう思うとゾッとした・・。