(遅い・・。)


今日は迎えに行くと行った筈。


店の裏側で

カードレールを跨ぎ、

裏出口に暗闇で目を凝らす。


他のホステスなどは

皆帰って行ってる。最後には

とうとうママが出て来た。



「え!? ナギちゃんなら

もうとっくに・・。」


「帰った!?」


「ええ・・あの神足さん?

あの子、今日ちょっと

様子が変だったわよ?」



店に着いた時、シャツの袖が

派手に破けていたので

訊ねたのだそうだ。



『ころんで、

引っ張ってしまってん』



それからずっと、

本調子じゃなくて

ちょっと元気がない様な・・。



「有難う、電話してみます。」

「そうしてやって。」



メールも届いている筈だ。

車に戻る途中、不安をつのらせ

ながら彼女の携帯を鳴らした。

三回目のコールでやっと出た。

ナギの息遣いに俺はホッとする。




「ナギ? ウチに戻った?」


『・・・・、』


「聞こえてる? 」


『ごめん、神足さん・・今日、

友達のとこに泊まるから・・。』




様子は確かに変だった。

電話口の声が・・

泣く前みたいに震えてる・・?