「え・・! あ。」



戸惑っている間にも

彼は席を立ち、あたしに

そちらへ座る様に促した。



「すみません。じゃァ、

お言葉に甘えて・・。」



素直に従ったあたしに

彼は少しだけ笑みを見せる。

気紛れに優しくされたあたしも

少し愛想笑いして

席に座らせて貰った。



(出て行くって実感沸くなあ)



速くて、見ていられなくなるが

見ずにはおれない大阪の景色。


ああ・・、もう見れへん・・。


あ。


後ろであたしを、

頬杖を付きながら観察している

男がガラスに映ってる。


ついでに云うと

窓にへばり着いてる、

自分の姿も。



"上京する田舎モノの図"



今のあたし、まさにそれ。


どうせ田舎者やって云うのは

大阪弁喋ってる時点で

バレてるやろけどさっ。



また

この席を返そうと立ち上がると

彼も少し慌てたかに正面を向く。





「いいよ、座ってて。」