「ウワー、いいんですか? 

これ、めっちゃ・スキー!!

ありがとー!」
 



彼が袋から出して手渡したのは

色気なくも、有名処の予約で

しか買えない限定・鯖ずし。

あの、身の分厚い脂の乗った奴。


新地の客はさすが

お土産に買うものが違う。


頻繁に大阪に来る"ツウ"は、

某インスタントカップうどんを

大量に買って帰ったりする。


カップの底やフタなんかに

W(ウェスト=関西)マークのある

もの。実はダシが全然違うから。



じゃ、またね? と愛想笑いを残し

自分の車両へ歩いていった。


手をブンブン振った後、鯖ずしの

竹の皮の匂いを嗅いで思わず笑う。


ラップ巻いてあるから匂いは僅か。


何か、社交辞令でも

そんな風に云ってくれる人が

1人でもおったら嬉しいもんやわ。



「・・・。」

「 ! 」




隣の男と目が合って

思わず顔を引き締めた。


あたしが1人で

ニヤニヤしとったから?

こんな所、

ジロジロ見んといて欲しいわ。


そんな時、

やっと新幹線が動き始めた。

聞き慣れへんアナウンスに

ふと不安になる。



怖いとかじゃなくて・・

何でやろな。

生まれてずーっと大阪やもん。

旅行とはワケがちゃう。



また・・帰って来るんかな?



「席・・、変わろうか?」



ボーッと

流れてる窓の外を眺めてたら

隣の男がポソリと

あたしを見て云った様だ。


気が着くとアタシ、

めっちゃ口開いてるやん!

カッコ悪っ。


ちょっと慌てて・・