cocoa 下




 ボケーッとしていると、いつの間にか
 二人がいなくなっていた。
 あれ!?そこにいたはずなのに。
 なんだか不思議な人達だなぁ。

 家に着くと、こうちゃんから電話が掛かってきた。
 電話に出ると、今帰るところだから
 家で待っててという内容の電話。
 音楽でも聴いてようかな。部屋に入ると
 ベッドに倒れて、プレイヤーにスイッチを入れる。
 大好きな洋楽のヒップホップ。
 聴き入っていると、しばらくして
 こうちゃんが部屋に入ってきた。
 そして、とんでもないことを口にだす。


「優愛!俺明日のテスト勉強してねー!!」


 はぁーーーー!?
 絶句する私にこうちゃんは笑う。
 何の教科も?そう聞く私にへらっと笑って頷く。
 私のどこかが切れる音がした。


「何へらへら笑ってんだよ、馬鹿が!ふざけんなよ…?追試になって土曜日の試合出れなくなったらどうすんだよ?」


 兄譲りの短気な性格。
 こうちゃんの胸ぐらを掴む私にこうちゃんは
 慌てて冷や汗をかく。


「お、落ち着けって。な、優愛!」


「落ち着けだぁ?」


 掴んでいる手がさらに強まる。
 あんなに受験が近いから勉強しなきゃいけないって
 言ってたのに、何も手出してないなんて…。
 バスケ…バスケバスケ。


「…こうちゃん。」


 手を緩めてこうちゃんから少し離れる。
 こうちゃんは私の肩に触れようとした。


「優愛…?」


 キッ こうちゃんを睨む。


「今から勉強しやがれ!」


 ガッ こうちゃんの頬を殴る。
 尻もちをつくこうちゃんに上から見下ろす。


「何…すんだよ、優愛!」


「…こうちゃんがいい点数取れなかったら、バスケの試合出れなくて私相沢兄弟に…!」


 留めなく溢れる涙。
 こうちゃんが負けたりしたら
 相沢兄弟に何されるか分かんないじゃん。
 馬鹿こうちゃん!!

 すると、こうちゃんは無言で立ち上がり
 私の頭を撫でてきた。


「わりぃ。優愛のために勉強してくるわ。」


 そう言うと私の部屋から出て行くこうちゃん。
 家族に挨拶して家を出るこうちゃんの声。 
 こうちゃん…絶対試合に出て勝ってよ?