いい天気だなぁ。
 外に出ると晴れていてとても涼しかった。
 もうすぐ夏休みだな。何して過ごそうかな。
 水族館、遊園地、海、プール、旅行。
 夏休みに入ってたくさんの思い出が
 できるなんて思ってもみなかった。
 まさか、中川先輩と…。


「あれ、優愛じゃん。」


 図書館に着くと、カウンター付近に
 桃が立っていた。桃は私に気付くと
 笑顔で近付いてくる。私も笑って挨拶する。


「え、桃何で図書館にいるの?


「まぁ…いろいろと。」


 苦笑いする桃を見てにやける私。
 そして何何?冷やかす私に、
 桃は顔を真っ赤にする。
 あ、新しい恋だなぁ、これ。
 よかった、恋したんだね桃。
 でもいったい誰だろ?
 その時、私の後ろから声がした。


「…佐藤の捜してた本、これ?」


 え、この声。まさか…。
 ゆっくりと振り返るとそこにはあの人が立っていた。


「あ、ありがとうございます。それです、中川先輩。」


 私の後ろにいる中川先輩に笑いかける桃。
 そんな、桃。何で中川先輩と一緒なの?
 中川先輩が私に気付く。


「…柳原?何でここに…。」


 中川先輩はそう言うと、驚いた表情から
 何か決意したかのような表情になった。
 そして、私の横を通り過ぎ桃の元へ近付く。


「佐藤、行くぞ。」


「え、でも中川先輩!」


 桃の言葉を無視したかのように、
 出口に向かい出て行く中川先輩。
 桃はその姿を見て、カウンターに
 本を持って行き、手続きが終わると
 私に苦笑いしながら手を振る。
 呆然と立ちつくす私の目には、
 今目の前に映っている現実に恐怖が芽生えた。

 どうして中川先輩と桃が一緒にいるの?
 そっか、中川先輩は桃が好きだったんだね。
 そっか…。泣いちゃだめ。
 決めたことなんだから。
 これで忘れられる。そして私は
 図書館の外にいる二人に背を向ける。
 さよなら、中川先輩。