cocoa 下




 そんな…。こうちゃん達を見ると
 みんなの目が死んでるように見えた。
 もう試合やめたい、そんな風に
 感じ取れる…。どうしよう。 
 もうすぐ前半が終わっちゃう。
 私に何ができるかなっ?
 すると、私は立ち上がって
 手すりに体を前に傾ける。
 そして、大きく息を吸う。


「馬鹿こうちゃんっっ!」


 しん…。周りが静まり返る。
 こうちゃんが私を見上げる。
 みんなの視線が私に向けられた。
 私は続けて大きな声で叫んだ。
 手すりを触る手が強くなる。


「こうちゃん達が負けたら私、相沢兄弟にあんなことやこんなことされちゃうんだよ!?」


〔…あんなことやこんなこと?〕

 こうちゃん達、谷口が揃って上を見上げる。
 想像している様子だった。
 谷口を含めてみんなが思ったことは。

〔なんか、ムカつく。〕


「だーーーっ!許せねー!」


 こうちゃんが頭をぐしゃぐしゃにしながら叫ぶ。
 それと同時に綾瀬高校の部員たちも
 目を揃え始める。そして、こうちゃんは
 相沢兄弟の前に立つ。


「お、やっと主将さん。お目覚めですか。」


 相沢兄弟は笑う。


「…本気モード、スタートだ!おめーら行くぞ。」


 こうちゃんが力強くそう言うと
 こうちゃんの後ろに立っている部員たちは
 目を変え、真剣な表情になる。


「「うすっっ!」」


 こうちゃんや部員たちの目線はただ一つ。
 相沢兄弟たちだった。
 よかった、こうちゃん達目が覚めたんだね。

 ピーー! 試合開始の音。

 ボールを最初に手に取ったのは
 中川先輩だった。素早く動くと
 中川先輩の前に相沢兄弟の兄、啓介が立っていた。
 そして、交わすかのように
 中川先輩はクロスオーバー。


「だから、それはきかないって。」


 啓介は笑いながら、中川先輩が
 持ち替えた時に取ろうとする。
 しかし。 シュッ
 中川先輩は瞬時にパスをする。


「何っ!?」


 パスの先にはこうちゃん。
 こうちゃんは笑う。


「サンキュー、海斗。」


 中川先輩も笑う。
 こうちゃんはそう言うと素早く
 体をゴールに向ける。
 相沢兄弟の弟、悠介が前に来る。

 だけど、こうちゃんは悠介を抜かす。


「早いっ…!」


 達波高校の部員たちを
 次々と抜かすこうちゃん。
 そして、こうちゃんが高く飛ぶ。
 みんなの目線はこうちゃん。上を見上げる。

 ダンッ バンバーン…


「わーー!」


 観客席が盛り上がる。
 ボールが床に転がる。
 こうちゃんのダンクシュートは見事に入った。
 こうちゃんは振り向いて叫ぶ。


「反撃開始だっ!」


 こうちゃんの言葉に相沢兄弟はこうちゃんを見る。