cocoa 下




 ピーー! 試合がまた開始する。
 次にボールを手に取ったのはこうちゃんだった。
 こうちゃんの前に悠介が立つ。


「…わぉ、他の高校よりお前早いな。」


 にやっと笑う悠介は、こうちゃんから
 ボールを取ろうとする。
 その時、こうちゃんはドリブルしながらボールを
 右手から左手に持ち返る。
 そのまま悠介の横を通り過ぎ、
 走り去ろうとした。


「お、クロスオーバーか。だけど。」


 バッ ボールがこうちゃんから離れる。


「なっ…!?」


「見えてる。」


 軽くボールが宙に浮く。
 ボールを人差し指でスピンさせる啓介。
 いつの間にか、悠介ではなく啓介がいた。

 早い、そう感じたその時。

 啓介は大きな歩幅でスキップした。
 そして着地したと同時にツーステップして
 ジャンプからのリリース。

 シュッ バンバーン…

 また達波高校に点数が加算される。

「本気でやんねーと、もう試合終わらせちまうぜ?」


「俺ら相沢兄弟を負かしてみろよ。」


 二人は笑って自分たちのポジションに戻る。
 こうちゃんは黙っていて
 拳を強く握っていた。こうちゃん…。
 その後も相沢兄弟たちに点数が取られる。
 取られたくてやってるわけではなく、
 どんなに早く動いても相沢兄弟たちの動きの方が
 一番早かったのだ。
 息が上がっているのはこうちゃん達だけだった。
 どうしよう、前半まだ一点も
 取れてないなんて…。

 こうちゃん…頑張って!!!!


〔畜生っ…何で…こいつら、こんなにはえーんだよ!?
 いくらパスしあっても、海斗の奴でも
 間に合わねーなんて。俺ら…勝てるのか?
 こんな強い奴に俺らは勝てるわけがねー。
 あー、早く前半終わらねーかな。
 だりぃ、眠ぃ、疲れたな…〕


「やべーな、大谷の奴。」


「…え?」


 谷口の言葉に耳を傾ける。


「相沢兄弟の術中にハマってやがる。」