ガタンと椅子から立ち上がる音に渚の肩が上がる。
大きな瞳が不安そうに揺れ、交差する視線…。
「土曜日…行くの?」
「え…??翔くん?」
「当麻とほんとに映画行くのかって聞いてんだよ」
俺の視界に映る渚は、一瞬戸惑って…恥ずかしそうに一つ頷いた。
「…っ。知らねぇから。当麻に何されても知らない」
「どうしてですか??」
苦し紛れに言葉を突く俺とは反対に、呑気に質問返しをする渚。
キョトンと頭の上にはクエスチョンマークを乗せて。ぎゅっ、と針が刺さった感覚。
お前…天才だよ。俺の胸をズタズタにする天才だよ──…