ネコ彼。(完)

 

――…あれ?


ふと見覚えのある後ろ姿に目を止める。


その人は横にいる女の人に笑顔で話し掛ける。


その横顔が見えた。


「!」


――…哲平…!?


なんで、こんなところにいるの?


いるはずのない姿に、私は目を疑った。


っていうか…


何、その笑顔?


何、その女の人?


二人がカウンターに向かう。


店員さんから、紙袋を受け取る哲平。


その瞬間、私の前だけで見せると思っていた笑顔が、哲平の顔に浮かんだ。


気を許した表情…。


――…私以外の人にも…その笑顔を見せるの?


……もしかして、帰ってこなかった理由は…他の居場所を見つけたってこと?


「―――…っ」


私は見ていられなくなって、そこから立ち去った。