涙の理由を、君は知らない


自転車を脇に置いて、バス乗り場近くのベンチに二人で並んで座る。

「はいどーぞ」

「はいどーも」


さりげなく、彼と肩が触れるくらい近付く。

ミルクティー、甘いね。

どうでもいい雑談を二人でしながら、家路を急ぐ人達を眺める。
真っ赤なコートを着たOLさんが前を横切る。


「あ、OLだ」

「なんでOLに反応すんだよ」

笑う彼。

「いや、さっきのOLみたく真っ赤なコートを着こなす勇気欲しくて」

「でも、OL似合わなさそう」

「私?」

うん、と頷く彼。

「まぁ、確かに詰まらなさそうだな、とは思っちゃうね」


私がそう言うと、彼は私を見て、


「いい女になってね」


と言った。


思わず、頑張る、と答えたけど、それって、どういう意味なんですか。

まるで、別れの言葉にも聞こえるそれは、どういうつもりなんですか。

そんな風に咎めることも出来ず、雑談の中に私の感情は流されていく。


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