涙の理由を、君は知らない


「あ、ありがと。いや、それがね、曲がり角曲がって出合い頭にオッサンとぶつかったんだけどね、オッサンが来た方には止まれマークあったのに、確実にオッサンとまってなくて、バーンってぶつかったら私のカバン吹っ飛ぶし、水筒も吹っ飛ぶし、足打撲したし! すごい大変だったんですよ!」

「……うわ、オッサン謝った?」

「特にノーコメントでしたよ! 軽くお辞儀して去っていったよ! そして奴は無傷!」


「……え、俺そいつ殴りに行くけど」


笑って済まされるかと思ったのに、彼は少し怒ったようにそう言った。


「いや、なにもそこまで」


「いや、マジでそいつ許せねぇ。絶対そのオッサンのチャリより俺が走った方が速いし」


何故か私より怒っている彼。


え、なんかこれ、ちょっと嬉しいかも。


「50m何秒だっけ?」

「6.2秒」

「はっや」


笑う。因みに私と3秒も差があります。


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