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空は、快晴。

雲一つない空はどこまでも見渡せた。

あまり使わない、水色の絵の具をパレットにこぼしてしまったときみたいに、それは美しく広がっている。



でも、こんな日は憂鬱だ。

あの日のことを思い出す。
――――あの日の、青い澄み渡った空を。




「チッ…」



小さく舌打ちをして、ベランダを出た。

せめて雲が一つくらいあればもっと気持ち的には助かったかもしれないが…一向にその気配はない。

何も悪くないただの空に悪態をつく自分がみっともなくて、そんな純粋な空に囲まれていられなかった。



一息つきながら寝室に入る。

そこには、まだ彼女の姿があった。


艶めかしい髪の毛が、太陽の光をキラキラと反射させる。


何の異変もない薫を一撫でして安心したのか、夾は安らかな笑みで寝室を出た。


自分で煎れたコーヒーを飲み干し、薄手のジャケットを羽織る。



「あ!」



荷物を持った瞬間、夾はふと思い出してメモとペンを持って寝室に駆けて行った。