ギューッと抱き着いた。
……夾が潰れてしまうくらいに、ギューッと。


そこに存在しているのは、ただの甘えんぼな薫だけじゃない。




「……よかった…」




胸を撫で下ろすようにホッと温かい息を吐く。


迷子のような薫は、本気で夾を探していた。
―――何かに怯えるように、必死になっていて……。



「薫…?」



思わず、また薫の感触を確かめてしまうが、触り心地に変哲はない。




俺から消えたりすることとかはない、な。




肩の力を落として、薫の頭を優しく二回撫で付けた。

薫の力もふわりと抜け、夾に満面の笑みを見せる。



「大丈夫か?」

「うん。隣に居なかったからビックリしただけ」

「そうか。…とりあえずシャワー浴びて来いよ」

「分かったー」


自分から離れ、バスルームに駆けていく薫を見つめる。


「コーヒー…飲みてぇな」


そうしてまたリビングに戻った。