――――「夾くん」――――



あっ……



「薫……!!!」




叫ぶように声を出した。


目の前には変わらない寝室の風景が広がっている。


剥ぎかけた掛け布団にギュッと力を入れた。




「夢…か」



キョウ
夾はそう言って、項垂れる。



何度この幻覚を聞けば気がすむのだろう。



あいつはもういない。

カオル
薫はもう、一生俺の名前を呼んでくれない。



―――そう、分かっているのに。





夢を見る度、傷を抉られる。


夾は自分の顔を片手で覆った。



ウンザリするくらい聞いた声。


もう嫌だと身体全身が汗をかいて否定する中、




心の片隅では…



もう二度とは聞けないあいつの声を待っている。