「アンタ、ロクデナシが帰ってきたよ!」


怒鳴るボルケーノ。


「アンタ!」

「う……む……」


その声を受けて、黒い塊がモソリと動いた。


「仕事は……してきたのか?」


それは、中年の男だった。

身を包むものは、ゴネルという膝丈程度のチュニック。

それは灰褐色で、まるで枯れた芝のようだ。

男は、無造作に頭をかく。

アルコールが入っていることが一目でわかる赤ら顔で、少年をじろりと見た。


「どうなんだ?」

「う、うん……したよ、パイロおじさん」

「そうか……」


パイロと呼ばれた男は立ち上がると、机の上にあったパンを一つ掴んだ。

いつからそこにあったのだろうか。

そのパンには、青いカビが生えていた。

パイロは、それを少年の足元に投げる。


「食え。褒美だ」


その言葉を聞くやいなや、少年はパンを拾い上げると夢中で口に運んだ。

汚れた床に落ちたパンには埃が付着していたが、そんなこと少年は構わなかった。

その姿を見ながら、パイロはニヤリと笑う。


「どうだ、美味いか?」


口いっぱいにパンを頬張った少年は、無言で何度も何度もうなずく。


「そうだろう、そうだろう」


目を細めるパイロ。


「なんせ、3日ぶりの食事だからな」


そして、酒に酔った足取りで少年に歩み寄ると、パンをむさぼる少年の髪を掴んだ。


「あうう!」


思わず口から呻(うめ)き声が漏れた。