やがて、その足は一軒の家の前で止まった。

石造りの一階建ての家だ。

その家を睨みながら、少年は被っていたフードを外した。

まだ幼さの残るその顔。

肩まで伸びた髪も手伝って、一見すると少女にも見える。

だが、その茶色の髪にツヤはなく、前髪の下に見える藍色の瞳は深く落ちくぼんでいた。

頬は痩せこけ、そこには無数のアザも浮かんでいる。

少年は、緊張した趣(おもむき)で扉に手をかけた。

ギィィィ……

と、木製の扉は、軋んだ音を立ててゆっくりと開いていく。


「よし……」


そして少年は、短く息を吸い込むと家の中へと入って行った。

空は少年の心を現すかのように、にわかに曇り始めた。