海坊主


「知ってたよ」


え・・・?


「ミキちゃんが、未成年って事。何人の女見てると思ってんの?」


店長は怒るどころか、笑い飛ばしてくれた。


「めぐ、るちゃん?」


「は、はい」


突然本名で呼ばれたので、ビックリした。



「多分、2度と会うことは無いだろうからね。幸せになって」


店長の目は、涙で潤んでいた。


「ありがとうございました」



風俗関係の仕事をする人は、悪い人ばかりだと思っていた。

でも、店長みたいに優しい人もいる。



街を歩いた。


この1ヶ月。思えば、ほとんど海里の部屋から出なかった。



今、この地を踏みしめてる事。


すっごい、難しい事なんだなと思う。


正直、海里の家を出た辺りから、足の震えが止まらない。



これから向かう別れに対するものか、それとも、大地を久々に踏みしめる喜びか。


でも、確かに言える事は、早く海里に会いたいの気持ち。



伝えるんだ。


海里に、好きって、伝えるんだ。



振られて、家なき子になってもいい。



伝えなきゃ、いけない気がした。