少し沈黙が続いた後、先に口を開いたのは誠也であった。 「莉沙、仕事場着くまで電話付き合って?」 口元が緩む。 電話で良かった。 こんな間抜けな顔見られたくないから。 誠也からの一言一言で私の心は少しずつ温かくなっていく。 この日から、ほぼ毎朝の電話が日課になった。 ―「おはよう。」 ―「今日も寒いな。」 ―「仕事面倒臭い。」 ―「今日夜も仕事?」 ―「気をつけて行けよ。」 ―「莉沙、今日も頑張れよ。」 同じ内容なのに、飽きなくて毎日を声を聞ける事がたまらなく幸せだった。