何も言わなくなった私に、シロは「…美愛子」と穏やかな声で名前を呼ぶ。
私はその声に、またきつく目を閉じた。
「…それで、俺を相手に誤魔化せると思ってんの。本当に平気だったら、美愛子は初めから泣いたりなんかしない」
…そうよ。
私、これでも強いから。
普段、あんまり泣いたりしないもの。
相手がシロじゃなければ、猫をかぶってどうにかできたのに。
ぜんぶ、見破られる。
彼にまっしろなフリは、通用しない。
「…………」
「美愛子は、なんでそこで立ち止まってんの」
「…自販機に行こうとしてたの」
「じゃあちょうどいいね。一緒に行こうよ」
シロはそう言って、トントンと階段を下りてくる。
…なんなのよ、ほんと。
ずるいにも、程があるんじゃないの。
私がいくら意地を張ったって、シロはそれを綺麗に崩していく。
授業の始まりを告げるチャイムが、遠くに聞こえた。
「美愛子」
シロが私の前に立って、優しく笑う。
私は目をそらしながら、小さく口を開いた。



