よし!と迫真の演技をするために気合いをいれて、前を見据える。
…私の、全力の『まっしろなフリ』。
とくと目に焼き付けるがいいわ。
未だ聞こえてくる女子たちの荒々しい声へ向かって、駆け出す。
あたかも息を切らし、急いでいるような姿で登場してみると、そこにいたのは同じ学年の女子たちだった。
「……あ」
案の定、ひとりの女子を数人の気の強そうな女子達が囲んでいる。
私はその子達と目が合うと、ぴたりと動きを止め、気まずそうに目を逸らした。
「…え、と…ごめんなさい、私…」
おどおどしていると、囲んでいた女子達が私を見て、罰が悪そうな顔をする。
そして興ざめでもしたのか、チッと小さく舌打ちして、「ミアちゃん」と私へ向かって言った。
「今見たこと、誰にも言わないでね」
その目は、もちろん有無を言わさないもので。
私は不安げに瞳を揺らして、ゆっくりと頷く。
むっとした顔のまま、女子たちはすごすごと教室へ戻って行った。



